Racha Fora(ハシャ・フォーラ)
南ブラジル方言で聞かれる「ハシャ・フォーラ」の意味は色々あり、「さあいくぞ」とか「行ってくれ」と訳すことも出来るが、このアンサンブルに適した訳は「ブランチ・ライン」〜 ブラジルから(アメリカを通過し)日本に繋がるラインから広がる枝々。ブラジルと日本は知られているよりもっと長い歳月深く繋がっているかも知れない。ハシャ・フォーラのサウンドは期待通りにデリケートであり、活力的であり、アコースティックであり、エレクトリックであり、そしてテクニックと頭脳である。
リーダー、本宿宏明のブラジル音楽への情熱は周知であるが、もっとも明記されることは彼の長年にわたる故ジョージ・ラッセル(作曲家、バンドリーダー、教育者、リディアン・クロマティック・コンセプトの創始者)との関係であろう。ラッセル氏のアイデアは本宿氏の作曲編曲法に強く影響し、彼独自のユニークな音楽イディオムをもたらした。本宿氏はフルートの他Akaiのウインドシンセ、EWIも演奏する。本宿氏のEWI演奏は驚異的な8オクターブを縦横し、彼がサンプラーをプログラムしてノート型コンピュータから醸し出すサウンドは多岐にわたる。
バイオリニスト、池田里花はクラシック出の魅了的な音質を持つが、ワイルドな演奏も自由に操る。インプロの名手であり、彼女の正確なポルタメントは日本の伝統音楽を想わせるが、反面ブルージーなサウンドもこなす。
ナイロンギター奏者、モーリシオ・アンドラージの演奏はデリケートなクラシックのようなヴォイシングでアンサンブルを支える。彼の伴奏のリズムは完璧であり、ソロは力強く和声的に奥が深い。
ベースのハファエル・フッシは著名なギタリストでもあり、ギターのテクニックをベースに活かしている。彼とギターのアンドラージは時に一体となり、あたかも10弦楽器のように聞こえることがある。彼の確固としたグルーブはアンサンブルの支えであるが、メロディーラインやカウンターラインをいいタイミングで挿入して聞き手を楽しませる。
フェルナンド・サシーは驚異的なタイム感のパンデイロ名手で知られるが、クリエイティブなサウンドを創る(例えばマヤ・オーシャンドラムでのブラシ音)打楽器奏者としても知られる。彼の掛け声はその素晴らしいパーカッション演奏をいっそう美味しくしてくれる。
本宿氏の作曲作品には理解不可能なタイトルを完成後に付けたものが多い。古くから時折見られる伝統で、デューク・エリントンも好んでいたようだ。
J.R.キャロル、2011年7月、artfuse.org コラムニスト